仮通夜の夜、眠れないほど
仮通夜から帰宅し、簡単に食事を済ませる。
空水先生の死がまだリアルに感じられず、
宙ぶらりんな気分。
妻と娘が体調不良で寝ているため、
いつもより静かで長い沈黙の夜。
弔い酒ではないが酒が大好きだった彼を偲び、
近所のコンビニで酒を購入。
帰り道、夜の闇と静けさ、
そして空気がいつもより大きく深く感じた。
夜の野郎が家族が一人いなくなった事実を知らしめるように。
自宅まであと数メートル。
涙が溢れ、嗚咽がもれる。
声を上げながら泣き、真っ直ぐ歩くこともできない有様。
ふらふらと帰宅し、自室に酒をかっ喰らう。
涙も鼻水も止まらぬまま、声をあげて獣が如く泣く。
「自分は祖父孝行ができただろうか？」
「荒れていた時代に、つっけんどんな態度をとったことを謝れなかった」
泣きながら色々な思いが駆け巡り、
やがて疲れ果てて朝になっていた。
珍伝説２ 喧嘩殺法
少年時代、私は気弱で身体の大きい者、それの威を借る者に、
生活を脅かされていた。
(その後、書店で見つけた格闘技の本に出会い、ひたすら鍛えて克服。
そしてテコンドーと出会い、道場を運営するまでになる。)
その弱者の代表かのような私が、
誰かにいじめられて泣くと空水先生は
「喧嘩の仕方を教えてやる」
とよく言ったものだった。
今の世の中では、大きな声で言いづらいが、
「やられたら、必ずやり返せ、舐められたらいかん」
とよく発破をかけられた。
空水流喧嘩術の最大の技はというと、
相手の耳を強く引っ張るというものだった。
結局、一度も喧嘩術を使うことはなかったが、
武道の世界に足を踏み入れるきっかけの一つになったと今は思う。
珍伝説３ 空の水の威力
空水先生は酒が大好きで、会うたびに酒を飲んでいた。
食事もほどほど、とにかく酒。
ある日、謎の陶器の瓶に入っていた液体を昼間から飲んでいた。
それは何かと尋ねると、、
「これは空水(そらみず)という水で、一献口にすれば、、」
いきなり、空水先生は正拳突きを連続で放った。
「力が漲るのだ。富国強兵、〇△◆×～」
かなり空水(甲類焼酎)で酔っていたようだ。
しかし、男は強くあるべきという姿勢は、
キャッチすることができた。
珍伝説 第３話へ続く
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